あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

定家の書写

『藤原定家全歌集 下』解説は、後鳥羽院との関係を拗らせた藤原定家が籠居に至り、一年後に勃発した承久の乱のさなか、多くの古典書写に及んだことを紹介する。『後撰和歌集』『拾遺和歌集』など三代集、『源氏物語』『伊勢物語』『大和物語』などの物語、『…

シェークスピアのソネット

シェークスピアの十四行詩(ソネット)は、ロンドンがペストに襲われた時期(1609年)に出版された。 ソネットの発祥は、イタリア・ルネサンス期。従来ロマンス言語においてその音韻効果を発揮していたが、これが英語にはなじまないことからシェークスピアは…

花月百首

藤原定家の拾遺愚草で花月百首*1を確かめた。歌人西行の追悼とは記されていないが、注釈欄には「建久元年(一一九〇年)九月十三日夜、九条良経の家で披講された」とある。作者は良経・慈円・定家・有家・寂蓮・丹後ら。同二十二日、百首から各自十首の撰歌…

後拾遺集のころ

『後拾遺和歌集 (岩波文庫)』発売予告を目にし、さっそく予約を入れた。この時代の芸術的背景に注目しているからである。表紙より。 もの思へば沢のほたるもわが身よりあくがれ出づるたまかとぞ見る―—和泉式部・赤染衛門・紫式部を始めとする女性歌人の華麗…

SNSの時代

SNSアレルギーの自分が、SNSのおかげで前に進む、という皮肉。晒す行為を嫌悪する一方で、晒す行為のおかげで出会いがある。この時代の潮流に乗る。 日本美(あるいは真善美)の追究、古典の呼吸の日常化、一人称文学としての短歌の在り方とそれによる…

本物の古典

紀貫之に関する一般書はきわめて少なく、著者は「子規以来のこと」となる歴史的事情に直面しながら筆を進めたという。この稀代の状況が健筆を支えるプラスの刺激になったと言い、『紀貫之』に重層的な魅力を加味する要因となった。 正岡子規に罵倒されて以後…

ただの紙のいと白うきよげなるに

気持ちの整理をして背筋を伸ばすとき、清少納言のことばを想起する。「御前にて人々とも…」の段。世辞が腹立たしく心が晴れない、生きることに嫌気がさしどこかに行ってしまいたい、と彼女が落ち込んでいるときに。 ただの紙のいと白うきよげなるに、よき筆…

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