あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

後拾遺集のころ

『後拾遺和歌集 (岩波文庫)』発売予告を目にし、さっそく予約を入れた。この時代の芸術的背景に注目しているからである。表紙より。 もの思へば沢のほたるもわが身よりあくがれ出づるたまかとぞ見る―—和泉式部・赤染衛門・紫式部を始めとする女性歌人の華麗…

象徴詩歌のルーツを探る 枕草子の存在

以下、寄稿としてまとめた。 「源氏見ざる歌詠みは、遺恨のことなり(「源氏物語」を読まない歌人は、とても残念に思われる)」。藤原定家の父で鎌倉初期に中世和歌の礎を築いた藤原俊成は一一九三年、六百番歌合(冬上十三番「枯野」判詞)にて、日本の精神…

枕、源氏の言葉使い

枕草子は源氏物語にとり、素材の宝庫だった。『清水好子論文集〈第3巻〉王朝の文学』43の冒頭。著者は、源氏物語による枕草子からの素材利用に言及し、「対抗意識に燃える紫式部は清少納言が指摘しておいたものを、見事に物語の中に生かし切ったことを誇るの…

一条朝の火花

10 世紀末、平安一条朝は、中宮定子に仕えた清少納言と中宮彰子に仕えた紫式部が生きた時代。藤原家の権力闘争の渦中、一条天皇の二人の后にそれぞれ仕えた女房として、両者は健筆をふるうことでしたたかに火花を散らした。 彰子後宮における回顧録『紫式部…

平安人の心で『源氏物語』を読む

平安時代の文化、習慣、風俗を知り、平安人が味わったように『源氏物語』を繙いてみよう―。そう語りかけながら平安社会を様々な角度からとらえた『平安人の心で「源氏物語」を読む』は、あらすじ収録の各帖ごと当時を紹介するテーマを定め、現代人を往時へと…

源氏物語の時代

濃霧に覆われ、現れたかと思えばふいに消え、近づいたかと思えばうっすらと遠ざかる。そんな自分にとり分かったようで分からないままにあった和歌史にかかわる謎が、快著『源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり』により仄かに明かされ始めた。たとえ…

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