あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

旅の友

 『大手拓次詩集』…日々、音読の友。好きな詩を毎晩、何度も読んでしまう。「色」を駆使した色彩イメージが好き。「香り」も、想像を掻き立てられる。そこには、やさしくかなしい孤独がある。不可能なことだが、お会いしてみたい方だ。どのような話し方をされたのだろう。声が聴きたい。

 『清唱千首』…前衛はずっと嫌っていたが、塚本邦雄のこの二十一代集からの拾遺には自分の「好き」がすべて鏤められている。紹介していただき、深謝。勅撰集の部立てで全千首。春巻頭がいきなり「冬の夢のおどろきはつる曙に春のうつつのまづ見ゆるかな(藤原良経)」。…瞠若…。「冬の夢の…」初句で心を奪われ、あとはもううっとりと流れてゆくだけ。着眼の新鮮さ、情景の鮮やかさ。解説には「冬・春、夢・うつつの天應鮮やかに、迎春のときめきを歌った…」とある。身も心もぼろぼろのときは、この一冊が最強のビタミン剤になる。ことのはのビタミン剤により、こころの免疫力を高める。

 『西行全歌集』…西行に惚れない人など、いないのではないか。自歌合わせ「御裳濯河(みもすそがわ)歌合せ(判詞藤原俊成)」「宮河歌合せ(判詞藤原定家)」にて、西行、俊成、定家が一本につながる。

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