あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

『枕草子』をめぐる数字

 『枕草子』の絵画的特色はどのように生まれたのか。この問いの答えを求めて関連のありそうな近年の研究論文を探る。

 赤間恵都子氏の「『枕草子』の雪景色―作品生成の原風景―(2014年)」に興味深い数字が紹介されていた。

 笠間書院(2014年)の『日本古典対照分類語彙表』は、古今集など三代集時代の著名作品における四季の語の使用数をまとめている。『枕草子』の四季の語の使用数は春夏秋冬の四季を通じて平均的であるという。古今集、後撰集、伊勢物語、源氏物語はいずれも春秋の語の使用数が夏冬を圧倒している。

 また、『枕草子』は雪月花に関して、突出して「雪」の景色を他作品よりも多い割合で描く。『源氏物語』に「月」が多いのは、夜の描写が多い由。面白い。

  • 四季の語の使用数
作品名
(古今集:部立数) (134) (34) (145) (29)
古今集 71 8 108 7
後撰集 72 14 131 12
伊勢物語 14 2 16 1
源氏物語 119 21 130 11
枕草子 19 18 18 18
  • 雪月花の使用数
作品名
古今集 146 28 39
後撰集 132 46 33
伊勢物語 23 12 9
源氏物語 273 201 86
枕草子 64 39 50

 ここから赤間氏が何を読み取るのか、研究者の視点を学びたい。

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