あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

幽玄の絵画

 武田裕子氏の日本画は、光と翳からなる幽玄を濃淡のあはひで漉きつつ透かして視せる。こうして、ありったけの言葉を詰め込み表現してみても、言葉は絵画の前に敗北している。夢幻の世界が無限に広がり、もうそれだけである。

 ツイッターで見かけたまらなく魅了されたので調べてみると芸大博士課程で文化財の保存修復技術を研究。平安時代の国宝を通して繊細な古典技法を修得されたとある。小学生時代に5年間ほど中国に滞在された経験も、えも言われぬ美を繰り広げる背景にはきっとあるだろう。なんとも言えない典雅とモダン空間を感じさせる。

 目を凝らせば凝らすほど、引き込まれる。裏箔(うらはく)、截金(きりかね)といった古典技法が生きている。古典の力がうつっている。杳杳たる時空から花鳥画が永久の言語で語りかけてくるのだ。

 音楽でも美術でも古典は生き生きとしている。されど、歌は。どう古典をモダンに生かせるのか。未だに試行錯誤。

takedahiroko.jp : 武田裕子 オフィシャルウェブサイト

 

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