あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

学術書

 学術書を読んでいると研究者の執筆スタイルにもいろいろあることに気づかされる。某書のアマゾンレビューに「…地の文章が…教養ある国文学者としては如何かと思われるほどにリアルで現代調なのも気になる。学生に感染したのかな…」というものがあり、正直、驚いた。研究内容の秀逸さは当然だが、読ませる学術文章というものがあるのだろうか。そんなものに左右されたくないのが本音だが、出版となれば一般読者が対象となるのだから両者併用が当然のように鬼に金棒となるのだろう。(因みに上記書籍はその「地の文章」を確認したい気持ちもあり購入した。)

 個人的に淡々と記される文章を好む。核のみを真摯に語る文章がいい。その視点でも『「古今和歌集」の創造力』はとても好感が持てた。研究を伝える文章のお手本を見せていただいた気持ちがした。他に『歴史読み 枕草子―清少納言の挑戦状』も好きである。こちらは三省堂サイト*1で読んだ文章に引かれ書籍で手元に置いておきたいと思ったことが購入のきっかけだった。両書籍ともに研究者の一意専心と人柄が伝わってくる。まあ、どの書籍もそうなのだが。

 この二冊からは最近の研究から学ぶ意義も痛感した。時代性を感じさせない学術書も存在するが、同時に新しい発見にも目を注ぎたい。現在、注目している書籍は、武蔵野書院刊「知の遺産シリーズ」からの『紫式部日記・集の新世界』である。すでにアマゾンでは入手不可能となり、出版社からの直接購入しか手立てはないようだ。同シリーズでは他に『伊勢物語』も欲しい。歌物語として源氏を含め和歌にも多大な影響を及ぼしている。

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