あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

移動の幸福感

 「幸せの鍵は新しい場所!人の脳は「移動」を快楽と捉えていた」を読み、即、芭蕉を想起した。記事は身近な移動を取り上げているので旅とは少し異なるが、「移動」は確かに芭蕉が求めた快楽で、視野を広める特効薬だったろう。

 幸福感を得るために新しいことを始める行為は、ことあるごとに奨励されている。散歩で普段と違う道を歩いてみるなど、空間の新体験は脳を喜ばせるので、鬱や加齢防止の記事によく見かけるトピックだ。

 ただ、今は疫の時代。アウトドア以外での移動行為はワクチンの社会保障がなければ極力、試みたくない。今は家に居られるだけで充分であり、巣ごもりの心地よさに埋もれてしまっている。反グローバリゼーションとして、もうローカライゼーションの人生で充分なのである。

 『奥の細道』の解説で知ったのだが、芭蕉は旅費として現代に換算すると毎回百万円ほどを持参していたそうだ。滞在先のパトロンたちが世話をした部分もかなりあっただろうし、あれらは芭蕉ならでは旅だったのだ。夢のまた夢であり、手にしたいと欲する気持ちすら湧いてこない。

Association between real-world experiential diversity and positive affect relates to hippocampal–striatal functional connectivity | Nature Neuroscience

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