あけほのむらさき

花も鳥もこころの旅にいく昔いくうつりして春はあけほの

比喩

 結社に入社したての頃。歌会で比喩について「直喩は避けよ、隠喩を用いよ」と徹底された。この指導者のひとつの方針だったが、これが今も体に染みついてしまい、「~やうな、やうに」「~のごと、ごとく」などわたしは直喩が使えない。

 作歌するときに言葉を唱え、音数が合うので使いそうになるといつも内面の声がストップをかける。こうする間に、すでに別の声が隠喩で歌を唱え始めているのだが、そのとき、両者の濃淡を味わうことを忘れてはいけない。

 確かに、隠喩のほうがイメージは強く打ち出される。象徴を提唱する結社ならではの修辞法かもしれない、と思うようになった。

 「隠喩は象徴とならなければ人の心を動かす深さを持ちえない」と詩人イェイツが言っている。…とはいえ、詩歌における象徴の登場は日本の方がずっと古い。

©akehonomurasaki